Building Archaeology Excursion

Building Archaeoloyという授業のエクスカージョンで、バイエルンの伝統的な戸建ての家屋の実測調査をするという機会があったのでその時のことを。

行った建物がこちら。

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外観。なかなか奇抜な色のバルコニー(おそらくオーナの趣味)。

f:id:kbJ:20150608142302j:plain道側のファサード。この地域の家屋はこんな感じで短手の切妻の立面を道に向けて建つものが殆ど。

f:id:kbJ:20150608142315j:plain長手の立面。

f:id:kbJ:20150608141317j:plain一階食堂。f:id:kbJ:20150608141320j:plainf:id:kbJ:20150608141319j:plain二階の廊下とホール。f:id:kbJ:20150608141318j:plain

2階寝室。

場所はミュンヘンから南に25kmほど行ったところにあるEndlhausenという小さな村で、この建物は大学の課外学習などの際に宿泊施設として利用されている。日本ではドイツの戸建ての家屋というと壁に筋交いが見えるハーフティンバー様式のものを思い浮かべがちだけれど、ミュンヘンがあるバイエルン州の特に南側ではほとんど見かけない。どうやらこういう建物がバイエルンに固有の様式な模様。

f:id:kbJ:20150608141321j:plain梁の先端が壁の外に出ている部分は雲肘木みたいになっていたり

f:id:kbJ:20150608142306j:plainそれが室内の廊下の上のシンボリックな場所にも出てきたり

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壁同士の接合の部分にかわいいペイントがされていたり。

授業自体はこういった古い建築物を実測する際に用いられる手法を体験してみようという内容のもので、一日目は手作業による実測、二日目はレーザ測定器を用いた実測とディテールや構法の調査と言った感じ。

手法の体験自体もいろいろと面白いことはあったのだけど、ここでは省略。個人的に興味を引かれたのはこの地域でのこういった家屋の増改築の方法とあり方。

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この建物は途中で増築されていて、このバルコニーの端部を境に右側が古い部分、左側が部分になっている。古い部分は地上階はレンガ造でその上が木造、新しい部分は基本的にRC造で屋根のみ木造。一見一つの建物のように見えるけれど、窓のピッチや大きさだったり、壁厚や外壁の仕上げの張り方の違いを見ると分かる。

増築部分は構法が違っても二階部分の外装の素材を揃えて新旧の部分を統合しつつ、張り方の向きを変えることで違いを残してもいる。屋根は見た目から増築する際に新しく作り直されたようにみえる。最後に大きなエレメントで統合するあたりがドイツっぽいとなんとなく思ったり。(余談だけど、学部三年の建築史実習で元興寺の極楽坊や東大寺の三月堂、箱木家住宅を見た時も感じたけれど、増築の際の屋根の取り扱いっていうのは設計者の考え方が出る重要な部分だなと改めて感じた。)

そして面白いのがこの建物を離れて周りの建物を見てみると、建物の様式と増築の手法が共通のものであること。(授業中に少しワークを投げ出して周りを歩き回ってみた)f:id:kbJ:20150608141335j:plain

これは調査した建物とほぼ同じような事例。接道する既存部分から奥側にボリュームが追加されている。

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これは右側と左側のどっちが新しいかで一緒にワークした台湾人の子と結構議論になったけど、やはりメインの道に接道している切妻型の立面が見えるほうが古いという結論に。新旧部分のバルコニーのレベル差を強引につないでいるのが少しお茶目。ちなみにこの建物の増築部は馬小屋で、他の建物では小さな工場だったり農機具倉庫だったりして、後から必要になった機能を既存の建物に増築して補うということがよく行われているよう。

とにかくこの建築の様式と増築手法のセットがある種のこの地域のヴァナキュラリティなのかもしれないと感じた。

最後に、とても面白かったのがこちら。現在進行形で増築工事中の事例。

f:id:kbJ:20150608141332j:plain奥側が既存部、手前側が増築部。

f:id:kbJ:20150608141331j:plainこちらの壁のコーナの接合の構法が

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この調査した建物に見られた構法と全く同じ。既存部の外装も増築に合わせて張り替えられているけれど、張り方の向きを変えて、統合しつつも差異を残すのも同じ。

こういう感じで古くから使われている様式や構法、増築手法が現代でもちゃんと生き残っているということを村全体から知ることができるといった良い経験だった。おそらくこうやって継承されているものはこれからも変わらず続いていくのだろうなと。

他のいろんなバイエルンの町ももっと訪れてみよう、と思わせてくれたエクスカージョン。こうやって一つの地域の建築についてじっくり考えられるのも留学でしかできないことだと思うので。